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2025.07

THE OPERA -CHAPEL-

オペラ

儀式本来の厳粛な時間を取り戻す

 

 
「幸福」という感情は、いまや規格化された製品のようです。白い箱、緑の装飾、光の演出。それらを順序よく並べれば、標準的な「感動」が完成する仕組みです。ですが私たちは、その予定調和な流れとは少し違うものをお見せすることにしました。
 
 
空間を構成する「木」と「石」。それはナチュラルテイストを演出するための小道具ではありません。「木」も「石」も、何百年、何千年も前から存在し、流行とは無関係にそこに在り続けるものです。私たちは、空間をそうした永い時間の象徴で満たし、時計の針が刻む慌ただしい日常から切り離された、儀式本来の厳粛な時間を取り戻そうとしました。
 
 
アーチ状の天井は、人々を守る方舟のようでもあり、日常の慌ただしさが入ってこられない結界のようでもあります。そして、巨大な鏡。もちろん空間を広く見せるため、などという単純な理由ではありません。不思議なことに、あの鏡の前に立つ人々は観客でいることが難しくなるようです。
鏡は、祝福する側の人間も、祝福される側の人間も、区別なく平等に映し込みます。そして、なぜかそこに忘れかけていた誰かの面影や過去の自分の表情が重なって見える、という効果があります。
 
 
特別な仕掛けを施したわけではありません。ただ、木と石と鏡という本質をそこに置いただけです。すると、空間が勝手に儀式としての厳粛さを取り戻し始めました。
 
 
私たちは「写るもの・映え」を作っているように見えて実はそうではないのです。「思い出すもの」をデザインしたのです。
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