現代の結婚式場が無くしたものを拾い上げる

1980年代に作られた結婚式場バンケットのリニューアルプロジェクト。

1990年代前半までは、現在のような所謂オシャレで女性好みの結婚式場はとても少なかった。だがそれは、各結婚式場が手を抜いていたわけではなく、むしろ男性経営者たちがこだわり過ぎた結果であり、とても思いが強いものが多い。今回担当したこちらのバンケットも、オーナーのこだわりと思いが詰まったユニークかつ素敵な空間だった。
ただ、今の婚礼対象世代からすると親の世代の結婚式場なわけで、その視点で考えると空間デザインのアップデートの時期であると判断、今回のプロジェクトに至った。

現代のウエディング施設作りは、マーケティングやPRや業界誌の担当者の声が大きく、結果どの会社も同じような雰囲気の会場が多いのが現実。例えばバンケットに絞って言えば、効率の良い面積、無駄のないカタチ、丸テーブルにn名着席、窓が大きく自然光とガーデン、オープンキッチンなど。ところが、こちらの会場は全て真逆。また開業当時のお店、企業としての方向性や信念を、今の担当者にも受け継がれるほどの力強さがあった。

私たちは、それらのメッセージを受け継ぎつつ、現代の新築ではあり得ないこのカタチを活かしながら、リ・デザインした。完成したバンケットは、古き良き時代の魂がこもったデザインを損なうことなく現代の新しいレイヤーを被せ、とても人気の会場に生まれ変わった。