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2025.08

SANGAI -THE SG CLUB-

サンガイ

遠い記憶の底にある「夢」のデザイン

 

 
「参階」を「場所」として空間デザインしませんでした。
 
 
ここは、これまでのTHE SG CLUBで紡いだ物語の書物を閉じたときに、そのインクの染みが裏側に描き出す「異界」です。あえて時空の座標を狂わせた、意識の深層に開いた「虚(うろ)」なのです。
 
 
ゲストは、遠い異国の見知らぬ都市、その片隅に打ち捨てられた古い建造物の内に迷い込んだかのような錯覚を覚えるでしょう。壁を伝う粗野な質感、影を深く吸い込むマテリアル。しかし次の瞬間、そこにはありえないほど静謐な、東方の庵(いおり)を思わせる張り詰めた空気が満ちていることに気づきます。
 
 
目を凝らせば、その矛盾はさらに深まります。
 
 
永い時を経たかのようなその壁面は、伝統的な建材や、冷たい光沢を放つ現代の工業素材で緻密に構築された「幻影」です。様々な要素が混在しながらも、一分の隙もなく研ぎ澄まされている。
 
 
西洋の退廃と、東洋の禁欲。
過去の残滓と、未来の冷徹。
 
 
これらの相容れぬ要素が、意図的に「歪(いびつ)」なまま同居する空間。ここはどこなのか。今はいつなのか。自分は本当にここにいるのか、それともこれは、遠い記憶の底にある「夢」を見ているのか。感覚の拠り所を失ったゲストは、やがてその身一つで、カウンターという「祭壇」の前に立つことになります。
この禍々しくも美しい「歪み」こそが、我々の仕掛けた装置。
 
 
日常という名の厚い皮膚を強制的に剥ぎ取り、その下にある剥き出しの魂を露呈させるためのものです。
そうして初めて、ゲストは、目の前の一杯に凝縮された「テロワール」――土地が生み出した「真髄」という名の生々しい力と、一対一で対峙することができるのです。
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