KOMORO HONJIN OMOYA

コモロホンジンオモヤ

江戸時代のおもてなし空間。その時間を再び動かすプロジェクト

クライアントの哲学である『不易流行』を、この『小諸本陣主屋』という歴史的建造物でどう体現するか、がポイントになりました。

私たちが20年前『THE FUJIYA GOHONJIN』で学んだことは、歴史は保存するだけでは、その魂を失ってしまうということです。

小諸本陣が持っていた、江戸時代からの「格」。これが「不易」です。ただ、私たちはこの圧倒的な歴史に対し、博物館を創ることはしません。私たちの仕事は、この空間の時間を再び動かすことでした。

数百年の時を刻んだ柱や梁が持つ「静」の世界に、現代のレストランという「動」の最前線を持ち込む。私たちがデザインしたのは、その静と動そのものです。歴史の重厚さを際立たせるために、あえてシャープな現代の照明を当てる。古の空間に、現代のテーブルと椅子を置き、ゲストがそこで食事をし、語らい、笑う。その瞬間、空間は「展示物」であることをやめ、再び「おもてなしの舞台」という江戸時代から続く本来の役割を取り戻します。

ゲストは、歴史を「鑑賞」するのではありません。この場所が持つ「不易」の空気の中で、現代の「流行」である美食を味わう。その「体験」そのものが、私たちがデザインしたかった『不易流行』の答えです。